大食いマンガ「喰いしん坊! 」の映画版を4作品観たよ。

映画「喰いしん坊!」

概要

原作第1巻の大原満太郎とハンター錠二の出会いから、喰いワングランプリが開催されるまでの9巻相当までを全4作に渡って描いた劇場作品。

▲大原満太郎(左)、ハンター錠二(右)

どんな感じ?

基本的に原作に忠実であり、劇場サイズでのオチをつけるためのオリジナル設定も原作を延長した設定で破綻がなく、実写化作品としては満足いく内容だと感じた。原作の大食いへのストイックさを茶化さず映像化しており好感も高く、完全再現されたニ丁喰いを実写で観られるというファンには嬉しい作品。

ジャケット

1作目 大喰い開眼編

2作目 大喰い苦闘編
3作目 大喰い敵対編
4作目 大喰い激闘編

キャスティングへの不満

ジャケットを見てわかる通り、お笑い芸人やテレビタレントが多く出演している"お祭り映画"的な側面もある。とても懐かしい顔が並んでいて昔のテレビを観ているような感覚もあり面白かった。長尺のなかで適度にエンタメに振った描写があることで見やすさが多少上がっていたように思う。ギャル曽根とジャイアント白田という当時の大食いテレビスターがチョイ役でも出演していて良かった。
しかし、個人的に許容できないキャスティングもあった。

・犬原
雰囲気は似ているかもしれないが、もう少し言葉が聞き取りやすい人を起用してほしかった。

・鳥飼
これが一番許容できなかった。原作を知っていれば鳥飼がどうしてこのキャスティングになったのかは容易に想像できる。鳥飼は麺の大食いを得意としており、バトルでうどんも食しているキャラクターである。要はうどんにゆかり?のある芸人が選ばれたわけでそれ以上に理由がない。前者の犬原のような見た目のキャスティングではないため、容姿も雰囲気も全く似ておらず、だいぶ老けて見える。そのうえ、映画内のオリジナル設定では鳥飼はデザイン事務所勤めで失敗し引きこもりになった過去のある男になっており、オリジナルの社会人経験のない引きこもりとはかけ離れている。特段このオリジナル設定が活きる改変もないため、見た目の年齢の違和感を払うためだけの設定のように思える。身長も高ければ通天閣食いの迫力も増した可能性もあるし、演技力もあいまって不満が募った。改めて原作を読んでみると、映画では鳥飼が原作以上にフィーチャーされており、その象徴として、大阪で偶然出会った大原と鳥飼が仲良く飲みにいくシーンが追加されている。このシーンではハンター錠二の大食いに向き合う精神を尊敬する大原と、自分を「麺だけの人間」と見下した(と思っている)ハンター錠二への不信を吐露する鳥飼の交錯を描いている。この映画では鳥飼は第2の主人公と言っていいほど大事な存在だったからこそ悲しい。あと、通天閣食いのときに片手をポッケに入れて屈みながら食べていて、そこは余計な演出だと感じたし、胃の内容物を下ろすために深呼吸のように胸を張って両手を広げてジャンプをする鳥飼を象徴するあの技をカレーうどんバトルで見せてくれなかったのが悲しい。(1作目の替え玉のシーンはやってくれた。あと、もしかしたら記憶違いかもしれない)

・空念
キャスティングの意図すら不明。

映画として

劇場で観れるほど面白くはない。

▲2丁食い

主な改変

2作目「大喰い苦闘編 」

黒兵衛まわりは設定がかなり変わっている。黒兵衛はもともと漁師であったが、海上で事故死させてしまったとある漁師の奥さんと子供を養うために稼ぎのいい大食い賭博に手を染めてしまった。父親が海から帰って来るのを待っている子供がオチ要員として追加されている。さらに大食い賭博を仕切る親方も少し性格のいい人になっていて、「大食いを通じて人間関係を解決するシナリオ」になっている。

4作目「大喰い激闘編 」

ストーリーの前後も大きく変わっており、4作目だけで喰いワン予選編と空念編がまとめられており、2作目と同様に「大食いを通じて人間関係を解決するシナリオ」 にするためのオチ要員の子供が追加されている。映画はOKFFの予選の開始から始まり、ホームレス設定のオクレとのステーキバトルが4作目のクライマックスになっている。空念とはステーキ屋の前で出会い、一緒に店を回るなどのシーンは大幅にカットされている。オチの子供は卑怯な手口でTFFを妨害するマジック坂多の子供で、マジック坂多の家族関係を解決することをオチとしている。ステーキバトルもマジック坂多の妨害(ステーキにお腹を膨張させるための食用重曹を混入)によって大原が窮地に追いやられるというオリジナル展開。それでも大原はオクレを負かした。マジック坂多の悪事は犯行現場を見ていた子供(息子)によって発覚。子供の告白によって我が身を見直したマジック坂多が父親としてやり直すことを決意して話は完結する。

実写化するとどうなる邪道食い

ものによってかなり不快感が違う。邪道食いも忠実に原作再現されており、悪食3兄弟もしっかり登場する。とはいえ、意外と見るに耐えないほどではない悪食が多い。個人的に一番不快だった食事シーンはダントツでハンター錠二の食事シーンだった。ストーリーとは関係のない食事シーンで、パスタを思いっきり啜って食べてたり、カレーのスプーン2丁喰いや、ショートケーキをガツガツかき込むシーンが結構不快だった。うろ覚えだが、これらのシーンが連続して流れていたのもあって嫌だった。
ステーキのミキサー食いはそこまで見た目の不快さはなかった。また、恐らく意図して咀嚼中の口内を見せないようにないっていた。これでも劇場で上映された作品なので、大画面でぐちゃぐちゃの口内が映し出されたらたまったものではないだろう。…残念ながら1シーンだけ口内が見えるシーンがあった。大喰い激闘編で鳥飼がパンを口いっぱいに頬張るシーン。ここは最悪だった。
通天閣食いはシンプルに行儀が悪かった。あと、眼の前にいる大原にめちゃくちゃ汁が飛んでいそうでかわいそうだった。

▲ハンター錠二のマニア向けサービスシーン

ツッコミどころ

熊田役はジャイアント白田だったが、大喰い激闘編では顔を整形した前置きをして全く別の役者が演じていた。そこまでするなら無理に熊田役に当てる必要はなかったのでは…?
大喰い敵対編で、大食い3兄弟のドライブイン編と名古屋でのカレーうどんバトルをするのだが、ドライブイン編で大原は親父からハンター錠二の伝説を聞くためにどこかに一泊しており、また、名古屋での宿のシーンがドライブインのパートで泊まった宿と画角までも完全一致している。数十分前に映った宿が今度は名古屋の宿として映されて困惑した。どちらも同じ仲居だったが、名古屋パートでは仲居が名古屋訛りをして微妙に差を出す小細工をしている。それ以外に見分ける方法がない。
大喰い激闘編の序盤で行われていた水着美女大食い大会シーンはなんだったんだ。
マジック坂多が最後改心して映画は終わるが、「またイチからやりなおす!」みたいな感じで流すには無理のある悪行がいくつかあったので、あまり納得感はないオチだった。
大原が使ってる携帯とノリアキがUnstoppableで使ってる携帯が同じ機種とカラーだった。

▲熊田(整形後)とマジック坂多

▲謎の画角シーン

おまけ

ゾンビ屋れい子の実写映画も3本全部観たが、これは実写化とは名ばかりのオリジナル映画で原作要素はほぼ皆無だった。見る価値なし。ただ、車の助手席に無言で大人しく座っているゾンビを見れるのはこの映画だけだと思う。
マリみての実写は一周回ってめちゃくちゃ面白い。祐巳ちゃんの演技がとても良い。特に蔦子さんから写真を奪おうとして取っ組み合ってるシーンがマジでツボ。元気ないときに観ると回復する。